トモトシ《停滞のトレーニング》/suzuko yamada architects/アグネス吉井/下道基行/contact Gonzo/
▶トモトシ《停滞のトレーニング》
「さすがにこれ以上、驚くことはないだろう。」と気を抜いていたら、さらなる衝撃が私を襲いました。
会場に表れた赤い服の男。

歩く姿が妙にかっこいい。犬を散歩するように、プロジェクターを引っ張っています。

ランウェイを歩くモデルと犬、のようなエレガントな雰囲気で会場を一周していました。
その次の写真が、いきなり床に倒れてるものになってしまい、すみません。

とても痛そうです。
これは、トモトシのパフォーマンス、《停滞のトレーニング》のひとコマなのですが、あまりにも不意な出来事だったので、決定的瞬間の記録を撮り損ねてしまいました。
撮り損ねたパフォーマンスの内容は、「電車にダッシュで乗ろうとするが、直前でドアが閉まって激突してしまう」というもの。
現場では、プロジェクターで壁に映像を映し出し、JRのホームを再現しているので、本当に電車に突っ込んでいくようなリアル感があります。
事後動画↓
会場で彼は、閉まりかけの電車のドアへ突進し、コンクリートに激突し、跳ね返り、地面をのたうち回りました。
予備知識なしだと、本当に衝撃的。
はじめは単純に「体を張ったシュールなパフォーマンス」と感じましたが、作品解説を読んでみると、これがかなり意味深い。
どうやら彼の「壁激突」パフォーマンスは、戦後に活躍したアーティスト、村上三郎の「紙破り」へのオマージュ作品のようです。
面白いのは、現代の彼が突進するのは「紙」ではなく「コンクリの壁」だと言う点。当然、突き破れずに、激突して跳ね返されます。
戦後の日本に訪れた、突き抜けるような「高度経済成長期」と、その後に続く「停滞期」にいる、現代のわたしたち。
壁への激突パフォーマンスは、現代における「出口のない閉塞感」を表していたのか、と納得。
私もぶつかりたい。そして突き破りたい!
トモトシ《停滞のトレーニング》2021-2024
The Training of Stuck
トモトシは豊橋技術科学大学建設工学課程を卒業後、10年にわたって建築や都市の計画に携わる。2014年から 「人の動きを変容させるアクション」をテーマに映像作品を発表。2020年から東京でトモ都市美術館を運営し、新しい都市の使い方を提案している。本作《停満のトレーニング》は、壁に映し出した電車の映像に作家自ら激突し、現代の「停滞」について考察するパフォーマンス。戦後の前衛アーティスト集団「真体美術協会」のメンバー村上三郎の作品へのオマージュでもある。
トモトシ | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=717
【MEET YOUR ARTISTS】トモトシ- YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=F0CJS1atXw8
トモトシ(@tomotossi) • Instagram
https://www.instagram.com/p/C_2VgzeyJ7v/
▶suzuko yamada architects《AWT BAR》
激突パフォーマンスで驚いたあとは、最後の大型作品《AWT BAR》に向かいます。
床に置かれたスチールバー。空間に曲線を描いたようなデザインが特徴的です。

床に映る影。剥き出しコンクリートと相性が良く、かっこいい。

スチールには、グラデーションカラーが施されています。

《AWT BAR》の中を行き交う人々。

宙に浮くグラスホルダー。空間が「一時的な社交場」へ。

自然と人の溜まり場ができます。

螺旋状に伸びた影もダイナミック。

空間とのサイズ感もぴったり。

suzuko yamada architects《AWT BAR》2023
スチールパイプ
東京芸術大学大学院在学中「Arts & Life: 生きるための家」展で最優秀賞を受賞。特徴的な住宅作品や2025年大阪関西万博の休憩施設などを手掛ける建築家。《AWT BAR 2023》では、直径13ミリのスチールバーで空間の輪郭を描き、変化する場の捉え方を提案。人々が自身で場を感じるきっかけを創出し、カクテルグラスが宙に並ぶことで一時的な社交場が形成される彫刻的なインテリア作品。
suzuko yamada architects | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=674
Suzuko Yamada(@yamadasuzuko) • Instagram写真と動画
https://www.instagram.com/yamadasuzuko/
▶アグネス吉井《このようにある》
これでやっと会場を一周りできました。一息入れるために、しばし座って小休憩です。
すると、謎の光景を目にすることに。
どこからともなく表れた、女性と男性。
女性が床にしゃがんだと思ったら、妙なポーズで制止しました。

男性も続きます。二人は終始無言です。

私も少々疲れていたので、無言で眺めていました。

休憩しているのかなぁ。

アグネス吉井《このようにある》2024
アグネス古井は、街を歩き外で踊る2人組のダンスユニット。傾き、形状、手触り、物の動き方など、場所の特性に振り付けられた2つの身体は、目の前の風景の即物的な面白さを引き立て、ありふれた日常の見え方を少しだけずらす。そこで主役となるのは、身体でなく場所なのだ。月に一度知らない街へ足を運んで気の向くままに散策し、短いダンス動画を撮影するフィールド活動「もやよし」は今年で8年目を迎え、400以上ある動画作品は全てInstagram(@aguyoshi)で見ることができる。
アグネス吉井 | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=704
アグネス吉井(@aguyoshi) • Instagram写真と動画
https://www.instagram.com/aguyoshi
▶下道基行《書籍》
会場の出口付近には、ライブラリーのようなスペースが。
てっきり常設ライブラリーと勘違いしましたが、下道基行さんの「本」の作品だったようです。
展示風景。作品である「本」を手にとって観覧できます。

下道基行《書籍》2005-2024
下道基行は、旅やフィールドワークをベースに日常に埋もれた物語を写真やイベント等によって顕在化させる表現を続けている。国内外で活動し、多数の賞を受賞している。2020年以降、直島に移住し、地域のアーカイブプロ ジェクト「瀬戸内「」資料館」を継続中。2012年、自らの出版社Michilaboratoryを立ち上げ、独自の出版物を制作販売している。5部のみ制作し20万円で販売された写真集『bridge』。売買無しの回し読み・書籍『14歳と世界と境』。直島民と共同制作する地域限定出版シリーズ『直島の新しい地図』等。下道にとって出版物制作は非常に重要な表現である。
下道基行| Motoyuki Shitamichi
1978年岡山生まれ。 香川拠点。
下道基行 | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=771
下道基行(@motoyukishitamichi) • Instagram
https://www.instagram.com/motoyukishitamichi/
▶contact Gonzo《Physicatopia》
撮影不可ということで記録に残っていませんが、contact Gonzoという作家さんの動画作品も展示されていました。
contact Gonzo《Physicatpia》2017
4チャンネルビデオインスタレーション
2006 年にダンサーの垣尾優と塚原悠也により結成。ゆるやかにメンバーを入れ替えながら、現在は塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZEの4名で活動している。グループ名は自分たちが実践する方法論の名称でもある。人と人との接触、肉体の衝突に着目し独自の牧歌的崇高論を構築、格闘技やスポーツを想起させる即興的パフォーマンスをはじめ、インスタレーション、写真や映像作品の制作、冊子編集などを行い、国内外のダンスフェスティバルや美術館での展覧会で活躍している。
contact Gonzo | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=454
contact Gonzo / official(@contact_gonzo) • Instagram写真と動画
https://www.instagram.com/contact_gonzo
▶SSSエキシビション レポート 終了
今回、なんの予備知識もなしに「MYAF SSS:エキシビション」に入場しましたが、非常にエキサイティングなエキシビションでした。
会場を仕切らずにオープンにしているので、行きたい方向へ自由に移動できる。
それなのに、なんとなく自然な「人の流れ」があるので迷子にならず心地よい。
広い会場でしたが、会場全体が一つの連続体になっていて素晴らしい空間でした。
境界なく連続する巨大な作品群。不意に遭遇するパフォーマンス。移動し交錯するパフォーマーと鑑賞者。
空間を行き来した私達も含めて、一つの大きな作品が完成したのだと思います。
まさにSSS:Super Spectrum Specificationです。
すばらしい空間を作り上げた皆様に感謝。
SSS:Super Spectrum Specification
ススス:スーパー・スペクトラム・スペシフィケーション
意訳:「素晴らしく連続してつながる仕様のエキシビション」
監修:山峰潤也
キュレーター:吉田山、呉宮百合香、堤拓也
MYAF2024のテーマ「NEW ERA」を受け、山峰潤也監修のもと、吉田山、呉宮百合香、堤拓也の3名のキュレーターが、国内外のさまざまな表現形式のアーティストとのコラボレーションにより、抽象化した現代都市の多様な側面を組み合わせながら提案する展覧会「SSS: Super Spectrum Specification」を開催します。
本展では、国際博覧会の形式を用いて、絵画や彫刻など伝統的な美術の技巧を超えた表現を探求します。そして、都市の要素である建築物や路地、広場、オブジェ等のモチーフを含んだ空間構成を舞台に、ヴィジュアルアーティストや建築家、パフォーマンスアーティストなどが連動し、来場者が作品を鑑賞するだけでなく、展覧会に参加することで絶えず偶然が発生する場をつくります。
AVEX MEET YOUR ART FESTIVAL 2024 エキシビション
SSS:Super Spectrum Specification
監修:山峰潤也
企画制作:株式会社NYAW
空間デザイン:GROUP
協力:無人島プロダクション、CON_、株式会社鎚絵
ART EXHIBITION | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/art_exhibition/

▶続いて、MYAF 『WHAT CAFE』エリアへ移動
SSSエキシビションのあまりの濃さに、すでに「MYAF来てよかった~。」と大満足な気分に。
一息つきたいところですが、思いの外時間に余裕がない。
MYAF2024の全エリアを楽しむために、足早に『WHAT CAFE』エリアへ向かいます。
寺田倉庫G1ビルを出ると、道路の向こうに『WHAT CAFE』につながる道が見えます。

信号を渡って、WHAT CAFEへ続く道へ。
歩いてるだけで、楽しくなるタイプの道です。あっという間。

この日の現地入りは12:30だったのですが、このあたりで「もっと早く天王洲に来るべきだったかも」と思い始めました。
その予感は、後に的中することになります。
▶MYAF 『WHAT CAFE』に続く
- SSSエキシビション レポート Part.1 天王洲 MYAF2024
- SSSエキシビション レポート Part.2 天王洲 MYAF2024
- SSSエキシビション レポート Part.3 天王洲 MYAF2024
- SSSエキシビション レポート Part.4 天王洲 MYAF2024
- 2 WHAT CAFEで「トークセッション」&「TOKYO ART MARKET」を体験する。天王洲 MYAF2024
- 3 MYAF2024 – アートフェア『MEET YOUR ARTISTS』 レポート。天王洲「B&C HALL」
- MYAF2024 アートフェア-『CROSSOVER』 レポート。天王洲「E HALL」
- 「5 SENSES ボンベイ・サファイア」のブースへGO!オリジナル・カクテル制作を体験する。MYAF2024 天王洲アイル
- MYAF2024 天王洲を夜まで楽しむ。TERRADA ART COMPLEX & 花火大会