森山未來 《S∧S∧S》③/アントニス・ピッタス/森下真樹《東京コシツ》/森山未來 《S∧S∧S》④/ゴッドスコーピオン/シュウ・ジャウェイ
▶箱から人が出てくる。 森山未來 《S∧S∧S》③
会場を移動していると、なにやら「箱」の周辺が騒がしいので、近づいてみます。
するとどこから表れたのか、黒いスーツ姿の男性が登場。
男性は箱に近づき、おもむろに箱を持ち上げました。
(さっきは持ち上がらなかったのに!!)
驚くことに、箱には底がありません。「底抜け」の状態です。
そして底抜けの箱の中から、黒いスーツ姿の男性が出てきました。
(衝撃!)
箱の横で、なにやらやり取りをはじめる二人。
箱から出てきたのは左の男性。

全身黒いスーツで怪しい雰囲気です。
よく見ると、右の男性は森山未來さんでした。

それからは怒涛の展開。
移動する箱。

訳がわからないまま、とりあえず箱を追いかけます。
しばらく移動すると、箱が再び鎮座しました。

ダンボール箱ってすごいですね。
一度床に置いてしまえば、元からそこにあったように見える。風景に溶け込んで、中に人が入っているなんて思えません。
この箱の底が抜けてて、中に森山未來さんが入っているなんて、誰が信じられるでしょう。
景色に馴染みすぎて、素通りされる箱。

「箱」ははじめから会場にあって、気にもとめない存在でした。
ですが今の私には、「箱」が特別なものにみえます。
いま、箱の横を通り過ぎた二人も、あとで「箱」に驚かされるかも知れません。
もしくは何も気づかないまま、会場を後にするかも知れません。
同じ「箱」なのに、見え方が変化していく。こういうインスタレーション良いですよね。
本日2度目の「箱」からの衝撃体験でした。
▶あたらしい紙を入れてみる。
箱のシステムが斬新で面白かったので、紙をもう一枚書いてみることに。
今度の紙は、内面をさらけ出している内容なので、モザイク処理です。

箱に人が入っていると思うと、差し込むときの気分も変わります。
今回は迷うことなく紙を差しこみ、ストンと落としました。
▶アントニス・ピッタス《Nobody is Unrelated》
すでに驚きの連続ですが、作品はまだまだ続きます。
次なる作品はこれ。


よく見ると、移民問題のデモ行進がコマ割りのように配置されています。下部には「入管法改悪反対」の看板が見えますね。
コミカルでありながら深いメッセージが込められた作品です。
アントニス・ピッタス《Nobody is Unrelated》2023
シルクスクリーン、シート、アルミニウム
アテネ出身のアントニス・ビッタスは「歴史のリサイクル」をテーマに、現代社会の問題を作品化するアーティスト。 バウハウスやロシア構成主義などのモダニズムの視覚言語を用い、歴史を独自に解釈する。ユートピア的な願望 が容易に反転し、破壊や権力の肯定につながるという考えに基づき、歴史と現代を結びつける。《Nobody is Un- related》は、日本でのリサーチを元に、反射シートへのシルクスクリーン印刷で制作されており、移民問題のデモ行進が漫画のコマのように表されており、コミカルに現実とファンタジーが交錯する日常を映す。
アントニス・ピッタス | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=655
▶森下真樹《東京コシツ》パフォーマンス
久々の平面作品で落ち着いていると、何やら会場にザワつく気配が。
一人の女性が白いボードを持って、会場内をゆっくりと歩いています。というより、徘徊しています。
それと同時に、広場の床面に白いテープが貼られ、四角く区切られた空間が出現しました。
女性がボードを壁に立てかけて、テープで区切られた空間に入り、立ち止まります。

踊りだしました。

「ここまで来たら、もう何があっても驚かないぞ!」という気持ちでしたが、ここでまた面食らいました。
2枚目の写真にペットボトルが写っていますよね。でも、1枚目にはありません。
なんとこの女性、踊りの序盤で自分のスカートの中からペットボトルを取り出し、飲みはじめたのです。
そしてペットボトルを床に置くと、再び踊りだしました。何事もなかったかのように。
よく見ると、1枚目の写真のスカートが不自然に膨らんでいますよね。その膨らみは、ペットボトルだったのです。
ということは、女性が会場を一周している間も、ペットボトルは股にあったのです。
衝撃です。
その後に続いたダンスはまさにコンテンポラリーであり、奇妙で難解。なのですが、思わずクスリと笑ってしまう場面も多く、不思議な愛嬌を感じました。
録音なのに噛んでる。
メロディーに合わせて、化粧品やシャンプーの成分名を読み上げていると思われます。
ダンスの終盤は、かなりの盛り上がりを感じました。「コカミドプロピルヒドロキシスルタイン」の動きが特に好きです。
フィナーレ?の前に、いきなり生着替え。

最後は決めのポーズ。バシーン!

踊り終わったあと、彼女はペットボトルの水をグイッと飲みほし、立ち去りました。
彼女のダンスタイムは約15分程でしたが、変化が多くあっという間でした。
印象的だったのは、ダンスの中で同じフレーズやポーズが繰り返し登場した点。
はじめて観るのに、「これ、さっき聴いたやつだ」「さっきの動きだ」「さっきと違うアレンジだ」「この動き、なんとなく好き」などの発見があり、不思議と惹きつけられるのです。
よく分からないけど面白い・続きが気になる・なんか分かる・親近感を感じる。そして全体的にピュアでドラマティック。
奇妙で難解と思いきや、分かりやすい。
観ている側にとてもフレンドリーなパフォーマンスでした。
作品の誕生秘話も面白いです。
パフォーマンス後、彼女が立ち去ったステージ。

左に作品解説ボード、右にステージと飲み干されたペットボトル。
森下真樹/Maki Morishita
ダンサー
2003年ソロ活動開始。東京在住。
森下真樹《東京コシツ》2005
ユーモア溢れる動きと言葉で周囲を巻き込む森下真樹が、自身のOL時代の経験から創った代表作。生命保険会社で働いていた頃、窓口業務の合間にトイレの個室やエレベーターでこっそり踊って心身を解放していた。監視力メラに映っているとは知らずに・・・。2005年の初演から20年間、バージョンを変えながら世界各地を旅してきた本作が、久しぶりに戻ってくる。都合の騒がしい日常から逃れた自分だけのオアシスで展開するあれこれは、どこか滑稽で愛おしい。
森下真樹 | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=731
▶ダンスを見守る箱。そして移動。 森山未來 《S∧S∧S》④
ダンスが終わり振り向くと、背後に「箱」を発見。

いつの間にか移動していたようです。
箱の中から彼女のダンスを観ていたのかも知れません。
別アングルから同じ場所の箱。立ち上がりかけています。

足が生えた状態の箱。不思議と景色に馴染んでいます。

箱はまたどこかへ移動するようです。
その後の箱との遭遇はこちら。
▶ゴッドスコーピオン《無始無終(VR)》
確認してみると、この時点で会場入りから早くも1時間半が経過していました。
エレベーターを降りた瞬間から驚きの連続で、体感としてはまさに一瞬。すでに大満足感がありますが、まだ作品ほ続きます。
非常に濃いエキシビションで、気が抜けません。
続いてはこちら。VRゴーグルを用いた、ゴッドスコーピオンの《無始無終(VR)》です。
ヘビをかたどったサークルのなかでVRゴーグルを装着し、3D動画が鑑賞できます。

VRゴーグルの数は3つ。
サークルの横では、VRと同じ内容の映像がモニターで流れています。ただしこちらは2D仕様。
奇妙な森の風景。字幕付きの映像。

VRゴーグルでの視聴は予約制で、今回は時間の都合上、体験できませんでした。
その代わりといっては何ですが、作品を外から眺めるかたちで堪能。
会場のほぼ中央に位置する蛇のサークル。怪しくライトアップされて、遠目にも目立っています。

怪しげなサイバー空間の中で、光を反射する蛇の白肌が艶っぽい。

サークル状のヘビのオブジェ。自分の尻尾を噛んでいる、ウロボロス(Ouroboros)の蛇です。

ゴッドスコーピオン《無始無終(VR)》 Beginningless Endless (VR)2023
VR 、PC、ヘッドマウント・ディスプレイ、ウロボロス彫刻、カーペット、カラー・トランジション照明
ゴッドスコーピオンは、形而上学や宗教哲学、テクノロジーをテーマに、時間と空間のフレームの変化を描く作品を 制作している。VR作品《無始無終》は、シュレーディンガーの著作『生命とは何か』、渋谷区猿楽町に現存する6世紀後半に建てられた古墳「猿楽塚」および能楽を基に制作された。ストーリーは能「卒塔婆小町」を原型とし、15分ごとに繰り返される円環的な体験を通じて、身体と認知の変遷を探求する。
ゴッドスコーピオン | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=472
ゴッドスコーピオン
1990年生まれ。 東京拠点。
▶シュウ・ジャウェイ《黒と白ージャイアントパンダ》
蛇のサークルの横には、緑色のサークルが対のように配置されています。
シュウ・ジャウェイの映像作品、《黒と白ージャイアントパンダ》です。
芝生のような緑のサークルには自由に座って映像作品を鑑賞できます。

別の時間にもう一枚。どちらの写真にも、森山未來さんの作品である「箱」が映り込んでいます。

「歩き疲れて、少し休みたい」ときの休憩にも最適。緑色とパンダに癒やさる。

シュウ・ジャウェイ 《黒と白ージャイアントパンダ》2023
5チャンネル ビデオインスタレーション
シュウ・ジャウェイはこれまで、アジアの冷戦における忘却された歴史を主題に、映像作品やインスタレーションを制作してきた。日本では国際芸術祭「あいち2022」や、山口情報芸術センター [YCAM] での「浪のしたにも都のさ ぶらふぞ」展など、これまで数多くの展覧会に参加している。本作は「シアターコモンズ18」にて初演された中国の パンダ外交に関するレクチャーパフォーマンスを再構成した映像インスタレーションである。日本のお笑い芸人と の協働を経て生まれたコミカルなやりとりに一興しつつも、パンダという愛くるしい動物に託された政治的な思惑 とその関係を垣間見ることができる。
シュウ・ジャウェイ | MEET YOUR ART FESTIVAL 2024「NEW ERA」
https://avex.jp/meetyourart/festival/artist/detail.php?id=481
シュウ・ジャウェイ | Hsu Chia-Wei
1983年台中(台灣)生まれ。
台北(台湾)拠点。
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